法人成りは税理士に相談すべき?タイミングと費用を解説
個人事業主として事業が軌道に乗ってくると、「そろそろ法人にしたほうがいいのか」「税理士に相談したほうがいいのか」と迷う方は多いのではないでしょうか。法人成りは、得か損かだけで決められるものではなく、いつ・どう進めるかで結果が大きく変わります。この記事では、法人化の判断軸やタイミング、税理士に相談するメリットと費用の目安を、税理士目線でお伝えします。なお、税制は毎年改正されるため、本記事の数値や制度は2026年(令和8年)6月時点の情報としてお読みください。
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法人成りとは?個人事業主と法人の違い
法人成りとは、個人事業主として営んできた事業を新たに設立した法人に引き継ぎ、法人として事業を続けることです。まずは個人事業と法人で何が変わるのかを押さえておきましょう。
個人事業主のままでも事業は続けられますが、利益が大きくなるにつれて、法人のほうが税負担や信用面で有利になることがあります。ただし、法人には社会保険への加入や設立・維持のコストも伴います。
| 項目 | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 事業の利益にかかる税 | 所得税(超過累進税率)・住民税 | 法人税ほか(比較的フラットな税率)+役員報酬には所得税 |
| 社会保険 | 国民健康保険・国民年金が中心 | 健康保険・厚生年金に原則加入(社長1人でも加入) |
| 対外的な信用 | 取引や採用で不利になる場合がある | 信用が高まり、融資や取引で有利になりやすい |
| 経理・申告の手間 | 比較的シンプル | 会計・決算申告が複雑になり、事務負担が増える |
| 赤字のときの税金 | 所得がなければ所得税はかからない | 赤字でも法人住民税の均等割がかかる |
法人成りは「税金が減る」だけの話ではありません。社会保険や事務負担まで含めた全体像で判断する必要があります。
法人成りのメリット・デメリット
法人成りにはメリットもデメリットもあり、得になるかどうかは利益の水準とタイミング次第です。それぞれ見ていきます。
メリット:節税(所得分散)・信用力・融資・消費税の免税期間
法人成りの最大のメリットは、所得の分散による節税です。個人事業主の所得税は超過累進課税なので、利益が大きいほど税率が高くなります。法人化すれば、利益を「役員報酬」と「法人に残す利益」に分けられるため、全体の税負担を抑えやすくなります。
また、法人化すると対外的な信用が高まり、金融機関からの融資や新規取引で有利に働きやすくなります。加えて、資本金1,000万円未満で設立すれば、設立後最大2期は消費税が免除される場合があります。ただし、特定期間(設立1期目の前半6か月)の課税売上高または給与等の支払額が1,000万円を超えると、2期目からは課税事業者となります。また、インボイス発行事業者として登録している場合は、免税期間であっても消費税の納税義務が生じます。
デメリット:社会保険の強制加入・赤字でも均等割・事務負担
デメリットとしてまず大きいのが、社会保険への加入義務です。社長1人の会社でも健康保険と厚生年金に加入しなければなりません。保険料は役員報酬の額に応じて決まるため、報酬の設定次第では手取りが想定より減少することもあります。
また、法人は赤字でも法人住民税の均等割を毎年納めなければなりません。均等割は所得ではなく会社の規模で税額が決まるため、赤字でも負担が発生します。京都市の場合、資本金1,000万円以下・従業者50人以下の法人で年額約7万円です。このほか、会計や決算申告が複雑になり、事務負担や維持コストが増える点にも注意が必要です。
【判断の核】いくらで・いつ法人成りすべき?4つの軸を「手残り」で見る
法人成りのタイミングは、売上や所得の目安だけで決められるものではありません。判断のポイントは、(1)課税所得、(2)課税売上高、(3)社会保険の負担増、(4)将来計画の4つ。節税額だけでなく、社会保険料や均等割、税理士費用まで差し引いた「手残り」で比べることが欠かせません。
最適なタイミングは「自社の手残り」で変わります
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所得の軸:課税所得 約800万〜900万円が一つの目安
法人化を検討する所得の目安は、一般に課税所得で800万〜900万円前後といわれています。この水準を超えると所得税率が高くなり、法人税率との差で法人のほうが有利になりやすいためです。
ただし、実際の損益分岐点は売上構成・経費・家族構成・社会保険の負担によって変わります。「○○万円を超えたら必ず得」というものではなく、社会保険料や均等割、税理士費用まで引いた手残りで判断する必要があります。
売上の軸:目安は年商3,000万円前後
売上の目安としては、年商3,000万円前後が一つの節目です。経費率にもよりますが、この水準を超えてくると課税所得が800万〜900万円に達しやすく、所得税率と法人税率の差で法人化のメリットが出やすくなります。
かつては「課税売上1,000万円を超えたら消費税の免税メリットで法人成り」という考え方もありましたが、インボイス制度が普及した現在、多くの事業者がすでに課税事業者として登録しています。消費税の免税だけを理由に法人化を判断する意味は薄れており、課税所得ベースで考えるのが現実的です。
社会保険・将来計画の軸:負担増と「その先」で考える
法人成りは、社会保険の負担増を、節税や信用・融資といった将来のメリットが上回るかどうかで判断するものです。社会保険料は決して小さくないため、目先の節税だけで決めると、かえって手残りが減少することがあります。
「来期にまとまった融資を受けたい」「人を雇いたい」「取引先から法人化を求められた」――こうした事業の次の一手が判断材料になります。たとえば創業期の資金調達を考えているなら、法人化のタイミングと融資の計画をあわせて組み立てると効果的です。当事務所では、節税額だけでなく、融資や採用といった将来計画とセットで法人化の時期を考えるようにしています。資金繰りや経営の見通しについては経営改善支援もあわせてご検討ください。
法人成りを「しない方がいい」ケースもある
法人成りがすべての個人事業主にとって得になるわけではありません。当事務所では、ご相談を受けても「今はまだ個人のままがよい」とお伝えすることがあります。煽らず、事実に基づいてお伝えするのが方針です。
たとえば、課税所得が目安の水準に届いていない場合や、その年だけ一時的に利益が出ている場合は、法人化を急がないほうがよいでしょう。社会保険料の負担増で手残りが減少するケースや、経理・申告の事務体制が整っていないケースも同様です。法人成りは一度行うと個人に戻すのに大変な手間がかかります。目先の税金だけで判断せず、数年先まで見据えて決めるのが無難です。迷うときは、「今やるべきかどうか」だけでも専門家に相談してみてください。
法人成りの手続きと流れ|個人→法人の引継ぎが要注意
法人成りは、会社を設立して終わりではありません。個人事業から法人への引き継ぎには専門的な知識が必要で、個人で対応するのはかなり困難です。大まかな流れは次のとおりです。
(1)会社の形態や基本事項を決めて法人を設立、(2)個人事業の廃業手続き、(3)資産・負債の法人への引き継ぎ、(4)税務署や年金事務所などへの届出、という流れです。freeeを使った具体的な設立手順や費用内訳は、別記事「会社設立 税理士 freee」で詳しく扱いますので、あわせてご覧ください。以下では、法人成りならではの注意点である「引き継ぎ」と「個人側の手続き」に絞ってお伝えします。
資産・負債の引継ぎと低額譲渡の注意点
個人事業で使っていた資産や負債は、法人へ引き継ぐ必要があります。方法としては売買による譲渡、現物出資、賃貸借などがあり、資産の種類や金額によって適した方法が異なります。在庫(棚卸資産)や車両、店舗の内装などは典型的な対象です。
とくに注意が必要なのが、引き継ぐ価格です。時価より大幅に安い価格で譲渡すると「低額譲渡」とみなされ、時価で譲渡したものとして課税されることがあります。個人から法人への譲渡では、譲渡価額が時価の2分の1未満の場合にみなし譲渡課税の対象となります(所得税法59条)。また、棚卸資産や固定資産の譲渡には原則として消費税もかかります。引き継ぎの価格や方法を誤ると想定外の税負担が生じるため、この部分は是非税理士に確認しておきたいところです。
個人事業の廃業手続きと「最後の確定申告」
法人成りをしたら、個人事業の側でも手続きが必要です。まず、税務署へ個人事業の廃業届(事業廃止届出書)を提出します。あわせて、法人成りをした年分について、個人として最後の確定申告を行う必要があります。
個人事業の廃業に伴う主な届出は次のとおりです。廃業届(個人事業の開業届出書)は廃業日から1か月以内、青色申告の取りやめ届出書は翌年3月15日まで、給与支払事務所等の廃止届出書は廃止から1か月以内に、それぞれ税務署へ提出します。消費税の課税事業者であった場合は事業廃止届出書も速やかに提出が必要です。最後の確定申告では、引継ぎに伴う売上の計上や、個人事業税の見込控除など、忘れると損をしやすい論点がありますし、設立の準備に気を取られ、個人側の申告や引継ぎの処理が後回しになりがちです。個人事業税は翌年に課税されますが、廃業年に限り翌年分の見込額を必要経費に算入できます(所得税法63条)。忘れると余分に所得税を払うことになるため、必ず処理しておきましょう。
法人成りは誰に相談する?専門家と無料窓口の役割分担
法人成りの相談先は税理士だけではありません。手続きの内容によって適した専門家や窓口が異なります。役割分担を押さえておくと、誰に何を頼めばよいかが明確になります。
| 相談先 | 主な役割 | こんなときに |
|---|---|---|
| 税理士 | 税務・節税・法人化のタイミング判断、決算申告 | いつ法人化すべきか、資本金・役員報酬・消費税を相談したいとき |
| 司法書士 | 会社設立の登記 | 設立登記を代行してほしいとき |
| 行政書士 | 許認可申請、各種書類の作成 | 許認可が必要な業種のとき |
| 社会保険労務士 | 社会保険・労務の手続き | 従業員の社会保険や労務を整えたいとき |
| 無料窓口(商工会議所・よろず支援拠点など) | 一般的な情報提供、創業相談 | まず無料で情報を集めたいとき |
無料の公的窓口は情報収集向き、専門家は手続きや個別の判断向きです。税理士・司法書士・社会保険労務士などが連携していれば窓口を一本化でき、相談先を行き来する手間が省けます。当事務所でも、提携する士業と連携し、法人成りをまとめてサポートできる体制を整えています。
法人成りを税理士に相談すべきケースと依頼するメリット・タイミング
法人成りは税理士に依頼しなくても進められますが、判断を要する場面が多いため、専門家のサポートが役立ちます。とくに次のようなケースでは、税理士への相談をおすすめします。
たとえば、(1)法人化のタイミングに迷っている、(2)資本金・決算期・役員報酬の決め方がわからない、(3)消費税や資産の引き継ぎが不安、(4)設立後の経理や申告もまとめて任せたい、といったケースです。税理士に依頼すれば、節税の検討や届出漏れの防止、税務調査への備え、創業融資の支援など、幅広いサポートが受けられます。
相談のタイミングは、法人化を考え始めた「検討段階」から早めに動くのが基本です。とくに決算期は税務上の有利・不利に直結するため、必ず税理士に相談して決めることを強くおすすめします。資本金や引き継ぎの方法も、設立前に決めておくほうがムダがありません。設立後の継続的なサポートをご希望の場合は、税務顧問もあわせてご相談ください。
役員報酬や引継ぎの判断は、設立前後の数か月が分かれ道です
迷ったら、freee認定アドバイザーの税理士・公認会計士に無料でご相談ください。 無料相談はこちら
法人成りを税理士に依頼する費用相場
税理士への依頼費用は、依頼する範囲によって異なります。設立サポート(スポット)、設立後の顧問契約、決算申告の3つに分けると把握しやすくなります。以下は事務所によって幅がありますが、おおよその目安です。
| 依頼内容 | 費用の目安(2026年6月時点) |
|---|---|
| 法人成り・設立サポート | 0〜5万円前後(顧問契約を前提) |
| 設立後の顧問契約 | 月3万円前後〜(事業規模で変動) |
| 決算申告 | 15万円前後~ |
顧問契約を前提に、設立サポートの費用を割引・無料にしている事務所もあります。費用を抑えたいなら、設立だけを単発で頼むより、設立後の顧問とあわせて相談するほうが現実的です。ただし、料金の安さだけで選ぶと設立後のサポートが手薄になりがちです。費用の中身――誰が・何を・どこまで対応するか――まで確認するようにしてください。なお、登録免許税などの設立そのものにかかる実費は別途必要です。
法人成りに強い税理士の選び方とピオカル会計事務所に相談するメリット
法人成りを相談する税理士は、料金だけで選ばないことをおすすめします。法人化「前」の判断から、設立「後」の運用や資金調達まで一貫して見てもらえるかどうか。この視点で選ぶと失敗が少なくなります。チェックしたいポイントをまとめました。
| チェック項目 | 見るべきポイント |
|---|---|
| 判断・試算力 | 法人化の損益分岐を、手残りでシミュレーションしてくれるか |
| 料金の明確さ | 何にいくらかかるか、内訳が明確か |
| 設立後の対応 | 顧問・記帳・決算まで継続して任せられるか |
| クラウド会計 | freeeなどのクラウド会計に対応しているか |
| レスポンス | 相談しやすく、返答が早いか |
| 資金調達・士業連携 | 創業融資や補助金、他士業との連携に対応できるか |
ピオカル会計事務所は、京都市北区・上京区を拠点とするfreee認定アドバイザーの会計事務所です。監査法人で約10年の経験を持つ税理士・公認会計士が、法人化「前」の手残りシミュレーションから、設立「後」の記帳・申告、創業融資の支援までワンストップで対応します。代表が直接担当し、チャットでも気軽にご相談いただけます。
「設立費用0円」をうたう全国規模のサービスや低価格のネット完結型とは異なり、当事務所は価格ではなく「判断の質」と「設立後の伴走」で力になることを心がけています。現在の顧問税理士に法人化を相談しにくいという方は、税理士変更もあわせてご検討いただけます。事務所の方針や対応者については事務所概要もご覧ください。
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よくある質問(FAQ)
※本記事は2026年(令和8年)6月時点の情報をもとにした一般的な情報であり、個別の税務判断を保証するものではありません。税制は改正されることがあり、適用の可否は個々の状況によって異なります。実際の判断にあたっては、最新の制度を確認のうえ、税理士などの専門家にご相談ください。